山形市の新名所「Q1」から考える地方都市における中心市街地のあるべき姿

みなさん、こんにちは。外資系コンサルやりながら、写真撮って自由気ままに記事を書いているよ。よろしくお願いします。

今回は自分の故郷、山形県山形市の中心部に新しく生まれた施設『Q1』についてレビューしてみる。中心市街地を活性化させる魅力もある一方で課題もある施設と感じたので、それを率直に伝えたい。

Q1の概要

山形駅から七日町という中心市街地方面に歩いて16分。七日町に向かうまでに本町という民間企業の山形支店が多く集まるエリアにQ1はある。

ちなみにQ1は「キューワン」ではなく、「きゅーいち」である。「キューワン」でいいんじゃないの?

Q1は山形市立第一小学校が移転・廃校になることに伴い2022年9月にオープンした施設。中にはカフェや美容店、サテライトオフィスがあり、中心市街地に集まる人たちの憩いの場となっている。

そもそも山形市立第一小学校は山形市初の鉄筋コンクリート造という山形の歴史に名を刻む施設である。その歴史から、国の有形登録文化財、近代化産業遺産に登録されている。Q1はそんな小学校をリノベーションして生まれた施設である。

Q1のリノベーションを主導したのは山形市役所である。市長である佐藤は、北海道生まれの経済産業省のキャリア官僚であったが、山形市長になって3期目を迎えている。東大法学部出身という非の打ちどころのないキャリア。

ユネスコ創造都市やまがた

山形市は、2017年10月に日本で初めてユネスコ創造都市ネットワークの映画分野で加盟認定された「創造都市やまがた」であり、Q1はそれを具体化する施設として体現されている。

山形市中心部には、以前大規模から小規模まで様々な規模の映画館が点在していた。現在では郊外に「映画発信の中心」が移ってしまっているが、市内全域で見れば、全国的にみても映画館の数は現在でもトップクラスである。

ちなみにユネスコ創造都市は、「デザイン」分野で神戸、旭川、名古屋、「伝統工芸」分野で金沢、丹波篠川などで認定を受けている。

繰り返すが山形市が初めて映画部門で認定を受けたのである。

映画部門は山形市以外にオーストラリアのシドニー、韓国の釜山、インドのムンバイ、イタリアのローマ、フランスのカンヌといった世界を代表する映画祭の都市が選出されており、それと山形が肩を並べているのだから驚き。

創造都市として山形が評価された点としては、やはり「映画祭」が大きい。

山形を代表するイベントとして、『山形国際ドキュメンタリー映画祭』がある。この映画祭は、山形市中心部で2年に1度開催され、開催の度に世界から多くのドキュメンタリーの著名人が山形を訪れる。映画祭自体は、東京国際映画祭などが開催される日本はおろか、ヴェネツィア、カンヌ、ベルリンなど世界の各地で開催されているが、ドキュメンタリー映画祭を行なっているのは世界でもごく僅かである。その希少性が、ユネスコ文化遺産に認定されるきっかけとなった。

山形の中心市街地を取り巻く課題

地方都市の中心市街地を取り巻く環境は年々厳しさが増している。山形市も全国の地方都市に類に漏れず、中心市街地が廃れている。七日町は、以前のような活気をなくしており、休日の昼間でも街を行き交う人はごくわずかである。

そんな衰退著しい七日町の中で最も衝撃が大きかった出来事は山形資本の百貨店、「大沼」の閉店である。1700年創業の大沼は、コロナが本格化する前の2020年1月に突然閉店した。七日町の象徴と言っても過言ではない大沼の閉店には山形の政治、経済界、市民全てが衝撃を感じた出来事であり、中心市街地の活性化に拍車をかけることになった。

他にも七日町は、以前は松坂屋やセブンプラザといった百貨店、映画館など商業施設が多くあったが、今でも経営をし続けている老舗は八文字屋という本屋くらいである。

さらに、山形市にとって悲しいニュースがある。それは、モンテディオ山形の新たなスタジアムの建設予定地が天童市に選定されたことである。当初スタジアムの候補地に挙げられていた山形市は建設によって中心市街地である七日町に一定程度の経済効果が期待されたが、それも儚い夢と散った。

Q1の魅力って何だろう

そんな中心市街地の衰退著しい山形の中心部、七日町から徒歩圏内のエリアにQ1は生まれた。

山形市民にとってQ1への期待は何だろうか。そして、Q1自体、誰をターゲットにしている施設なんだろうと考える上で、現状入っているテナントを踏まえると段々解像度がはっきりとしてくるのではないだろうか。

テナントには、カフェやハンバーガーショップ、サテライトオフィスが入居している。そして、休日中に外では野菜が即売されていた。園庭では若い女性を中心にヨガをやっていたり。

1F

地下1階から地上3階までの4階構造になっている施設の1階には飲食店が中心に構成されている。

フランス人の店主が勤める大石田町が本店の「AndMERCI CAFE」、山形市七日町シネマ通りにある「BOTA coffee」の新店舗である「ぼた」、地元農家から仕入れた無農薬野菜と、無添加のパテ、その日の良質な食材で作られたハンバーガーを提供する「TEXAS COWBOY   BURGER & DELI」など。

今回は、AndMERCI CAFEにてスイーツをいただいた。店内は、当然ながら教室の大きさ。カフェのような小さな空間には教室の大きさは適度なようだ。ぜひフランスのカフェ文化を山形のQ1でぜひ発信してほしい。

2F

イベントスペースやシアタースペースがある。

そして1Fと同様、「つち」というカフェがあったので、そこでコーヒーをいただいた。

山形市七日町シネマ通りにある「BOTA coffee」の新店舗として新たにオープンしたカフェであり、めっちゃ観葉植物が並んでいる中でコーヒーをいただく。あまりにも観葉植物が多すぎて、カフェ王国東京にもないコンセプトのカフェ。

店内は若者だけではなく、高齢者の方も多かった。渋谷や青山のような若者だけが多く集まるような「東京のカフェ」を追うのではなく、少子高齢化の激しい地方都市のあるべきカフェの形として高齢者も集まりやすい場で今後もあり続けてほしいな、そう思う。

3F

ビジネスという観点で見てみると、モンテディオ山形や「GR」というデジカメの名機で有名なリコー、NHKがサテライトオフィスを置いている。山形駅や山形市役所、商店街にも近いこの場所にオフィスを設けることで、行政や商店街などの連携もしやすいのでは。

そして、シェアオフィスもあり、Macで仕事してたフリーランスっぽい人がいて山形にもシェアオフィスで仕事できる時代が来たもんだと感心したものです。

写真家として改めてこの建物を評価してみる

古い建物をリノベーションしているので、カメラマンである自分にとっては「映えスポット」が多くあり、嬉しい。こんな老朽化しているのだけれども、一種の風情を感じる景色は郊外のショッピングモールでは決して味わえない。

Q1の課題って何だろう

正直、課題は多いように感じる。ターゲットはぶれているような気がする。県内の人向けなのか、県外の人向けなのか、若者向けなのか、高齢者向けなのか。

カフェも山形に根を下ろす店があるのも良いが、全国的に有名なカフェもなければ大きな集客の吸引力にはつながらない。「スターバックス」や「ブルーボトルコーヒー」などいわゆるヒエラルキーの高いカフェブランドをテナントに入れるアイデアはなかったのだろうか。

スターバックスが商店街にあるだけで集客力は大きく変わると言われる。「スタバ 山形」と検索されることで、山形のその街の認知があるからであり、反対に言えばスタバがなければ、スタバに関心のある層はその街を見ることがない。県外の人間なら、七日町という山形市の中心市街地を知ることは永久にないはずだ。

そして、既存のQ1のコンテンツももっと魅力を発信すべきではないだろうか。

例えば、以前教室だったスペースを生かして、ミニシアターとなっているエリアがある。そのエリアではショートムービーを観覧することができ、2年に1度行われる「山形国際ドキュメンタリー映画祭」でも活用されている。この映画祭が、ドキュメンタリー界で有名なコンテンツになっており、活用されているスペースであることを発信することで、「ドキュメンタリー映画の聖地」としての定着が見込めるのではないだろうか。また、ミニシアターのエリアだけではなく、Q1の他のエリアを活用してドキュメンタリー映画の監督、撮影の大御所を呼びトークショーを開催するなど、施設を映画の魅力を発信する場として活用は十分深掘りできる余地は高い。

このように、Q1はまだまだコンテンツの改善が見込める可能性のある施設である。少子高齢化による地方都市の人口減少、そして地方都市に顕著な近隣の郊外への、市民の流出に歯止めが効かない中で、Q1が山形の中心部に市民を呼び戻す機会になる。ますます中心市街地から人やコンテンツが減ってしまう前に、Q1がより魅力ある施設として整備を行い、発信することが重要である。

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この記事を書いた人

カフェが大好きな写真家。YouTubeでカフェに関する動画を配信。主な出没場所は白金、渋谷。

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