どうも、毎度おおきに。外資系コンサルティングファームにてコンサルタントやらせてもろてます。the Day andと申します。よろしゅう。
自分は外資系のコンサルという顔以外にも、中小企業診断士としての顔も持っているわけでございます。
そして、中小企業診断士、いわゆる診断士という資格を少し特殊な方法で取得しました。それはメジャーな取得方法である第2次試験合格ではなく、大学院などに通って取得する「登録養成課程」への通学。
なぜ自分が登録養成課程に通ったかといえば、ズバリ「登録養成課程でしか得ることのできない魅力があったから」。そして卒業した今、その魅力は入学前に想定していた以上に存分にあり、ここを卒業して本当に良かったと思っています。
今回は、「登録養成課程」に少しでも多くの方が興味を持っていただけるように、選択肢の一つとして感じていただけるように記事を書こうと思います。
そもそも中小企業診断士という資格が何か、まだ知らない方もいるはずなので、ここで言っておくと、転職に有利でこの肩書きだけで飯を食っている人は大勢いる。そして、れっきとした国家資格。
中小企業診断士は、中小企業の経営課題に対応するための診断・助言を行う専門家です。法律上の国家資格として、「中小企業支援法」第11条に基づき、経済産業大臣が登録します。中小企業診断士制度は、中小企業者が適切な経営の診断及び経営に関する助言を受けるに当たり、経営の診断及び経営に関する助言を行う者の選定を容易にするため、経済産業大臣が一定のレベル以上の能力を持った者を登録するための制度です。中小企業基本法では、中小企業者が経営資源を確保するための業務に従事する者(公的支援事業に限らず、民間で活躍する経営コンサルタント)として位置づけられています。
との記載がある。
財政基盤の脆弱がちな中小企業にコンサルティングという観点での支援の資格を国家が認めているわけ。
この資格取得は簡単ではない。王道なのが、机上でひたすら突破していくスタイル。防衛省的にいうと背広組とでもいうべきか。第1次試験でマークシート型の回答、第2次試験でケーススタディを論述形式で回答する。
毎年第1次試験、第2次試験ともに合格率は20%くらいで推移。20%という難易度をどう読むかは様々かと思うが、
第1次試験の科目が、
- 経済学・経済政策
- 財務・会計
- 企業経営理論
- 運営管理(オペレーション・マネジメント)
- 経営法務
- 経営情報システム
- 中小企業経営・中小企業政策
と7つもあり、第2次試験は1題80分のケーススタディを4つ読んで、ケースに記載されている企業の課題と改善方針を示す問題になっている。第2次試験も1日かけて試験が行われるため、結構きつい。
試験の難易度としては弁護士や公認会計士、税理士、弁理士に比べると簡単だが、行政書士、社会保険労務士に比べると難しいし、出題範囲をカバーするのに時間がかかる資格。
資格取得までに時間と根気を要する中小企業診断士資格だが、第2次試験に挑まなくても取得できるルートがある。それが「登録養成課程」。登録養成課程は中小企業庁から「中小企業診断士資格を与えるためのコースを開設しても良いですよ」とお墨付きを与えられた学校が開設している。
以下は一例。
所在地 | 学校名 |
北海道 | 札幌商工会議所 |
千葉県 | 千葉商科大学 |
東京都 | 法政大学 |
東京都 | 公益財団法人日本生産性本部 |
東京都 | 株式会社日本マンパワー |
東京都 | 東洋大学 |
東京都 | 城西国際大学 |
東京都 | 日本工業大学 |
大阪府 | 関西学院大学(本部は兵庫県ですが、養成課程のキャンパスは大阪・梅田) |
北海道から東京、関西など幅広く登録養成課程は多くある。
この登録養成課程に通うためには、第1次試験に受かっていないと通えないので、そこだけはご留意を。
「なんだぁ、難しそうな第2次試験の勉強しなくても入れるんじゃん」。
そう思われがちな登録養成課程だが、正直卒業するのは難しい。体力的に。
自分は夜間の大学院の登録養成課程に通ったが、土日は1日中大学院の教室で講義、講義、ひたすらの講義の連続。さらに、中小企業庁から必須カリキュラムとして指定の経営診断実習なるものがあり、実際の中小企業にお邪魔してコンサルをやらなければならぬ。これを仕事をしながらやる。自分は2年間それに耐えて、なんとか診断士資格を取得できたが、土日奪われる。頭の切り替えが難しい。いつもビジネスのことを考えて休む暇がなかったため、曜日感覚を時々わからなくなる。
自分の場合は外資系コンサルに転職する前だったので、まだ時間に余裕はあったが、それでも休日毎週通うのはきつかった。
当然、通うだけではなく、毎回朝9時から大学院の同期とディスカッション、プレゼンして、講師からFBもらう。それでようやく夕方6時とか7時に授業終了。
卒業近くには卒業論文を書かねばならなくて、大学院の教授から指導受けてちゃんとした学術論文を書かないと卒業させてくれない。これが社会人大学院の大変なところなんだな、と通いながら身に染みて感じていた。
しかも学費は2年間で200万から300万円ほど、高すぎる。
覚悟がないよ通えないし、登録養成課程は本気の人間しか求めていない
ただ、卒業した今でも、「入学して良かった」と思えるものはいくつもある。逆にここでしか得られない診断士として差別化要素を得ることができたと思う。
それは大きく分けると3つ。(コンサルっぽく3つとか言ってみる)
養成課程に通わないと得られない。そう、座学では得られない。これはプレゼンスキル。
「結論から言え」、「結論→理由→具体例→結論」といわゆるPREP法、とかフレームワークに落とし込んで構造化してみる。そして、それを踏まえてパワポの紙を作る。パワポの紙もただオブジェクトをペタペタと張るだけの意味わからん、どこから読めばいいんだ的なものではなく、上から下、左から右、伝えたいメッセージははっきりしているかなど原則論をちゃんと抑えたパワポになっているか、という観点で大学院の講師や同期メンバーから厳しくチェックされてスキルがブラッシュアップされていった。(正直自分のスキルは改善の余地ありと思うが)
そして経営診断実習では、経営者の目の前に立ち、その場に適切なヒアリングを行い、企業に適切な提案策をプレゼンテーションという形で提供する。この経験を大学院でできたのは貴重だ。
第2次試験でもロジカルに回答する必要があるが、書くのと人前に立って発言するのは大きく異なる。養成課程では質疑応答だってあるわけで、その場の振る舞いの能力も高められる。
これもとても大事。今、コンサルをやっていてやはりクライアントの業界がわからないことは当然のように多々あり、それを補うためにデスクトップリサーチを行うが、このデスクトップリサーチだけではサービスとしては陳腐だ。そこで自分にしか何か得られない情報をクライアントに届けるために、必要となるのが業界を知っている大学院の同期メンバーや講師へのヒアリングだったりする。
自分の同期は大手企業の製造業、コンサル業、保険業、メディア業界など多種多様すぎて、何か聞きたければ大体網羅できた。
第2次試験では、試験突破の仲間はできるかもしれないが登録養成課程と比べると多くのネットワークを築けないと思われる。大学院に2年間必死で通学することで得られた、診断士としての価値ある財産である。
そして、卒業した今でも同期会やOB会は開催されており、定期的に情報交換、クライアントの紹介などが積極的に行われている。
在学中に中小企業の現場を見ることができたこと。これはスキルと重複するかもしれないが、あえて別にした。それだけ価値としては大きい。
第2次試験は、ケーススタディを読み解きケースに出てくる企業の課題や改善案を書き込んで中小企業診断士になるのだが(なんとも雑な言い方)、登録養成課程は実際に中小企業診断士として活躍されている方が講師として登壇される講義が多く、実務を踏まえた講義内容になっている場合が多い。
つまり、教科書通りではない中小企業経営の現場感を掴むことができる。これは、高い学費を払ってのみ得られる体験である。
自分の場合は製造業なんて今まで生きてきた中で、正直何も知らなかったモノが出来上がるまでの仕組みなんて知らなかったのだ。しかし、登録養成課程に通えば講義で、製造業支援経験の豊富な中小企業診断士としても活躍する講師から現場感や商慣習を教えてもらえる。
さらには、製造業支援は経営診断実習で支援が必須となる業界であるので、ものづくりの現場に行って、自分の目で日本の経済を長らく支えてきた製造業の実態を把握できる。
資格を取得するにあたって、現場のことを知らなければただ肩書きを得るだけになってしまうが、登録養成課程ではちゃんと現場を知ることができるカリキュラムになっている。
中小企業の現場を知らない人間ほど通ったほうが良い登録養成課程
このように、中小企業診断士資格を得るのは第2次試験の突破、登録養成課程で必死こいて土日通う、どちらも大変だ。自分のような登録養成課程に通えば、土日の休息の時間を失うが、それと引き換えに貴重な財産を得ることができる。
中小企業診断士資格を保有していること自体は「自分は何者か」を伝える上でとても有利な「ツール」だ。その上で診断士資格を得るプロセスで登録養成課程に通うことで中小企業に関する知見はもとより、経営全般の知識やコンサルティングのスキルも磨き上げられたのは大きい。
中小企業診断士になるには第2次試験突破が一般的だが、登録養成課程も主流になりつつあり、しかも第2次試験とは異なるスキルやネットワークを得ることができる
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